緑の莢は、香りの設計図。マシャールのカルダモンが「鼻に抜ける」理由
湯気の立つカレーをひと口。
ふわっと立ち上がる華やかな香りが、鼻の奥へすっと抜けていく―――
マシャールの一皿には、そんな瞬間があります。
その「抜け」を支えているのが、緑色の小さな莢(さや)。
スパイスの女王、グリーンカルダモンです。
ここで安心の一言だけ。
料理の中の莢は香りを移す役目なので、口に当たったらそっと外して構いません。――
でも本題はそこではありません。
大事なのは、あの一粒がいることで、香りの輪郭がどう整うかです。
香りは、辛さではなく「抜け」で決まる
カルダモンの魅力は、辛さではなく、香りの明るさ。
シトラスのように爽やかで、すっとする清涼感が、濃厚なソースの奥から立ち上がり、食べ終わりをきれいにしてくれます。
だから、同じコクでも重たく感じにくい。
「香りは濃いのに、あとが軽い」
「口の中がべたつかず、次のひと口がまた新鮮」
そんな感覚が生まれます。
宮廷料理が「華やかなのに上品」と感じられる理由の一つが、この設計です。
皿の中ではなく、鍋の中で香りを立ち上げる
マシャールのカレー類では、ホールのカルダモンを熱い油に入れて香りを立ち上げ、料理全体に移す―――
そんな使い方が多いそうです。
香りは、食べる直前に完成させるのではなく、鍋の中で丁寧に整える。
だから、ひと口目の湯気からすでに「香りが違う」。
この立ち上がりが、マシャールらしさです。
ホールと粉。女王は料理ごとに表情を変える
マシャールのこだわりは、カルダモンをホールだけで終わらせないところ。
ホール(莢)はカレーや煮込みで香りを立ち上げるために。
一方で、デザートやパン、焼き物には粉(パウダー)で、ほのかに香らせます。
ペシャワーリーナーン、クルフィー、シュリカンド。
甘いものに粉のカルダモンがふわっと入ると、甘さがただ濃いだけで終わらず、後味がすっと上品にほどけます。
ポイントは「ほのかに」。
強く主張させるのではなく、気づく人には気づく程度に香らせる。
この控えめな加減が、宮廷料理の余裕であり、マシャールの香りの美学です。
カルダモンは「質」で別物。だからデリーの専門店から
カルダモンは、質の差がとても出やすいスパイス。
鮮やかなグリーンで大粒なものほど高価で、香りが良いと言われます。
立ち上がりの華やかさも、鼻に抜ける感じも、はっきり変わる。
だからマシャールは、インド・デリーのスパイス専門店から仕入れています。
「どこで買うか」まで含めて香りを設計する。
ここまでやるから、香りが派手に暴れず、最後はすっときれいにまとまる。
食べ終わった後に、口の中が気持ちいい。
そんな余韻が残ります。
次のマシャールで、香りを味わうコツ
次回ご来店のときは、ぜひ次の3つだけ意識してみてください。
- ひと口目、湯気の「鼻に抜ける香り」を探す
- 濃厚さの奥にある「明るい爽やかさ」を感じる
- 甘いものでは「ほのかな香り」を探す
お皿の中の緑の莢は、香りの設計図。
気づいた瞬間から、同じ一皿の「楽しみ方」が増えます。
次はぜひ、香りの流れごとマシャールを味わってみてください。
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