有名インド人シェフによる「本格ビリヤニ」の作り方を解説!

インド料理というとナンやカレーもそうですが、ビリヤニを想像される方も多くいらっしゃいます。
数年前からのビリヤニブームの影響も相まってか、馴染みのある方も増えてきたように思われます。

日本のインド料理店でも、チキンビリヤニやマトンビリヤニなどをメニューで見かけることもしばしばです。

当店マシャールでも、マトカー・ハンディーと呼ばれる素焼きの土鍋で炊き上げられるダム・ビリヤニを提供しております。

そんな人気のビリヤニではありますが、本格的なビリヤニについては、どんなものなのか知らない方も多くいらっしゃいます。

本記事では、ビリヤニの特徴や歴史から作り方まで網羅的に解説していきます。

気になる方はぜひ読み進めてみてください。

1.本場インドでのビリヤニとは?

ビリヤニとは、インドやバングラデシュ、パキスタンなどインド亜大陸で食べられているスパイス香る贅沢な炊き込みご飯のことです。

実際のところどうなのかはわかりませんが、、スペインのパエリヤ、日本の松茸ご飯と並び「世界3大炊き込みご飯」と巷では言われています。
実際にそう呼ばれるくらい美味しいものであることには間違いありません。

起源にも諸説があります。
◾️15-16世紀のムガル帝国で誕生したとする説
◾️ムガル帝国の影響を受けたハイデラバードで誕生したとする説
◾️イラン・ペルシャの料理がムガル帝国を経由して伝わったとする説
◾️アラブ料理のカブールライス(ひよこ豆と肉の炊き込みご飯)とプラオ(ピラフのような料理)をルーツとする説

なかでも、アラブ料理のカブールライス(ひよこ豆と肉の炊き込みご飯)とプラオ(ピラフのような料理)をルーツとする説が有力だと言われています。

その説によれば、ペルシャ帝国が南アジアに進出したことでインド亜大陸に普及し、ムガル帝国時代に宮廷料理として花開いたお料理ということになります。
いずれにしても想像するだけでも楽しいですよね。

2.ビリヤニの発祥


「北インドは小麦粉文化、南インドは米文化」であるため、ビリヤニは南インド料理と言われることが多いです。

しかし、

実際には、南北インド各地で食べられており、その二大双璧をなすのが、ウッタル・プラデーッシュ州のラクナウとテランガーナ州のハイデラバードのビリヤニと言われています。

2-1.【北インドのビリヤニ】ウッタル・プラーデッシュ州のラクナウビリヤニ

歴史的な背景としては、ムガル帝国弱体化に伴い、芸術家や文人、料理人がラクナウ(アワド)に移り住み、ラクナウの太守のために料理人達が絢爛豪華な宮廷料理を生み出していったそうです。

やがてアワドも没落していくのですが、伝承ではありますが、宮廷料理のひとつであるビリヤニもまた大衆化していったそうです。

また、デリーではラクナウに似た少し脂っこい北インドらしいビリヤニが大衆食堂やビリヤニ専門店で提供されています。
カシミールではドライフルーツやナッツを多用したビリヤニが有名です。

2-2.【南インドのビリヤニ】テランガーナ州のハイデラバードのビリヤニ

南インドは、米文化圏であることから、北インドと比べてよりビリヤニが一般的で種類も豊富にあります。

ハイデラバードでは、ムガル帝国から独立建国されたニザーム王国の統治下に多くのムスリムが集まり、他の街にはない独特な食文化が育まれたと言われています。

なによりもカッチ式と呼ばれる製法(マリネした生肉のうえに茹でた米をのせて炊き上げる方式)が歴史的な背景を物語るべく特徴的なものとして取り上げられることが多いです。

また、タミル・ナードゥ州では、「チェティナード」「ティントゥッカル」「セーラム」「アンブール」がビリヤニの街として知られております。

そして、ケララ州では、北部タラッセリーのビリヤニが米とギーを合わせた風味豊かという特徴で有名です。

ケララ州、カルナータカ州、ゴアのエリアは、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、土着民族文化や西洋文化、多様な文化の影響から食材や調理方法も多様です。

ケララ州マラバール地方も独特なビリヤニで名を知られています。

3.ビリヤニはお祝いの料理


ビリヤニは結婚式や特別なお祝いの席で食べられる料理です。

しかし、現在では特別な日だけではなく、大衆食堂や屋台などで日常的にも食べられており、国民食として愛されているようです。

結婚式では大鍋で炊かれたビリヤニが振る舞われると当店のシェフ達からよく話を聞きます。

4.ビリヤニの種類


炒飯にも作り方がたくさんあるようにビリヤニにも無数の炊き方があります。

そのため、全てを網羅することはできませんが、有名な炊き方の種類について簡単に表にまとめました。

方式 調理法
パッキ式(ダム式) 加熱された肉と茹でた米を重ねて炊く調理法
カッチ式(ダム式) マリネした生肉と茹でた米を重ねて炊く調理法
ボイル式 加熱された肉に生米を混ぜて炊く調理法
炒飯式 カレーと炊きあがった米をフライパンや鍋で炒める調理法
プラオ式 マサラと生米を炒めてから炊く調理法
炊き込み式 マサラに生米を混ぜて炊く調理法

5.本格ビリヤニのポイント

Point1:バスマティライス(香り米)を使用する

インドでもレストランのシェフやこだわりがある人はインドの高級米である「バスマティライス」100%の銘柄を使用しています。
バスマティライス以外の長粒米がブレンドされている商品もあるため、香りや品質の面からは100%バスマティライスのものがよいでしょう。

また、メーカーによって香りや味も様々です。
日本米を選ぶのと同じでお好みのものを使ってください。

ビリヤニは日本米で作ることもできますが、本格的なビリヤニを作る場合には、やはりバスマティライスです。

「INDIA GATE」「DAAWAT」「LALWUILLA MAJESTIC」などがおすすめですが、スパイス食材店に行って相談してみるのも楽しいかもしれません。

Point2:ダムする(蒸し上げる)

インドで「ダム」と言えば、ふたで密閉状態を作り中の食材を蒸し上げる製法のこと。

ぴったりとふたをすることで食材を柔らかくふっくらとさせます。
ダムすれば鍋の中のグレービーが米に染みわたり、お米も柔らかくふんわりとなります。

しっかりとした密閉状態をつくるために、鍋にふたをする際に小麦粉を練って生地をつくり鍋の蓋のまわりにつけているのを見たことがある人もいるでしょう。

インドの屋台では手間がかかる小麦粉の代わりにアルミホイルをかましたりしているそうですが、ダムすることがおいしさの秘訣なのですね。

Point3:香りを作り出す

当店フセインシェフのビリヤニを食べたことがある人はうなずいてくれると思いますが、何にもまして香りの良さがピカイチ。

その大きな理由は、「ケウラウォーター」。
タコノキ属の花を蒸留して作られるエッセンス水のことです。

お米を茹でる時、最後に茹でたお米をグレービーと共に蒸す直前にケウラウォーターをかけることで、甘く香しい異国の香りを演出します。

ミントやパクチーなどハーブの香りやサフラン水の香り、香りの三重奏と言っても間違ってはいないでしょう。

6.ビリヤニの作り方


今回は当店のフセインシェフが過去に料理教室でレッスンをしたものの中からひとつご紹介したいと思います。

6-1.準備する材料

準備する材料

◾️サラダ油(米油、ひまわり油可)・・・1カップ強(220g程度)
◾️ホールスパイス

  • ビッグカルダモン・・・2個
  • グリーンカルダモン・・・2個
  • カシア(西洋シナモン可)・・・7~8㎝程度のものを1本
  • インディアンベイリーフ・・・2枚
  • クローブ・・・15粒

◾️GGペースト(おろしにんにく2割、おろし生姜8割にサラダ油を少し加えたもの)・・・45g程度
◾️マトンシャンク(すね肉)・・・2㎏
◾️塩・・・大さじ2強
◾️プレーンヨーグルト・・・1パック(400g)
◾️ビリヤニマサラ(大さじ5を使用)

【ホールスパイス】

    • インディアンベイリーフ・・・大2枚
    • カシア(西洋シナモン可)・・・7~8㎝程度のものを2本
    • メース・・・大2枚
    • ビッグカルダモン(種のみ使用)・・・3個
    • グリーンカルダモン・・・8個
    • クローブ・・・12粒
    • フェンネルシード・・・大さじ2
    • クミンシード・・・大さじ1強
    • スターアニス・・・大さじ1
    • ナツメグ(あれば)・・・1/2個

【パウダースパイス】

  • レッドチリパウダー・・・13g
  • カシミーリチリパウダー・・・5g
  • ターメリック・・・2g

◾️レモン汁・・・1/4個分
◾️生姜(千切り)・・・適量
◾️ミント(ざく切り)・・・適量
◾️パクチー(みじん切り)・・・適量
◾️青唐辛子(みじん切り)・・・適量(省略可)
◾️フライドオニオン・・・70g程度(生たまねぎ大2個分)
◾️ケウラウォーター・・・適量
◾️牛乳・・・250ml
◾️バスマティライス・・・2㎏
◾️米茹で材料

  • ビッグカルダモン・・・2個
  • グリーンカルダモン(割った状態で皮も種も使います)・・・2個
  • メース・・・大2個
  • クローブ・・・5粒
  • カシア(西洋シナモン可)・・・7~8㎝程度のものを2本
  • サラダ油・・・80ml
  • レモン汁・・・1/4個分
  • 青唐辛子(斜め切り)・・・1本(省略可)
  • ケウラウォーター・・・少々
  • 塩・・・大さじ2

◾️サフランウォーター・・・適量

6-2.作り方

下準備

準備1ビリヤニマサラ作り

ビリヤニマサラ用のホールスパイスを準備し、大きいものはスパイスクラッシャーでつぶしておきます。
乾煎りはせず、そのままミルでやや粗挽きに挽きます(細かく挽かないようにしてください)。
その後でビリヤニマサラ用のパウダースパイスを加えて混ぜ合わせます(使用する肉によってマサラの配合は異なります)。

準備2グレービー用ソース作り

ボウルにヨーグルトを入れて泡立て器などでよく撹拌し、大さじ1の塩(分量外)とビリヤニマサラ、レモン汁(分量外。1/4個分)を加えて混ぜ合わせておきます。

準備3米の浸水

炊く時間を逆算し、4回ほど丁寧に洗ってから30分浸水し、ザルにあげて水を切っておきます。
バスマティライスは米粒がつぶれやすいから洗ってもざっとという人が多いのですが、フセインシェフはため水をして優しく数回洗います。
浸水時間は短くて30分、1~1.5時間がベスト、2時間以上は浸けないでください。

作り方

STEP1

鍋に油とホールスパイスを入れて強火で熱します。
カルダモンがふくらんでくるまで軽く炒めながら油にホールスパイスの精油を抽出します。

STEP2

GGペーストを加えてさっと混ぜ合わせ(肉と一緒に火が入るので軽く混ぜるだけでOKです)、すぐにマトンを加えて炒めます。
10分程度、肉から出てくる水分がきっちり飛ぶまで炒め続けます。

STEP3

水(分量外)をひたひたになるまで注ぎ、塩を加えて混ぜ合わせます。
強火10分程度火を通したら、ふたをして弱火で90分程度、マトンが柔らかくなるまで煮ます。

STEP4

ふたを開けてグレービー用ソースを加えて混ぜ合わせ、生姜、ミント、パクチー、青唐辛子、半量のフライドオニオンを加え、ケウラウォーターを振り入れます。
牛乳を加えてざっと混ぜ合わせておきます。

STEP5

大き目の鍋に湯を沸かし、米茹で用の材料を加えます。
再度沸騰したら、米を加えて茹でます。
この段階で6割程火を通すイメージです。

STEP6

米が茹で上がる少し前にSTEP4のグレービーの鍋を強火にかけ、グレービーを温めておきます。
STEP5で茹でた米をざるにあげて水気を切り、手早くグレービーのうえにかぶせます。
残りのフライドオニオン、パクチー、ミント、サフランウォーターなどをちらし、ふたをして弱火で20分ほど炊きます。
20分経ったらふたを開けて鍋底の水分をチェックし、よければふたをして30分ほど蒸らして完成です。

7.まとめ

いかがでしたでしょうか?
一口にビリヤニと言っても、さまざまな起源をもち多様なテイストがあることがお分かりいただけたと思います。

インド料理はとても奥深いですし、何よりも美味しいですよね。

当店では、「熱狂!1/365のマニアさん」のカレーサミットでNo.1カレーに選ばれた「ダムビリヤニ」が人気です。
ディナーのみでのご提供で、1日の食数に限りがありますので、ご興味のある方はご予約をいただければと思います。

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