インドの本格チャイの作り方【スパイスレシピを解説】

インド、パキスタン、スリランカ、バングラデシュなど南アジア各地にチャイ文化があり、生活に根差しています。
最近は大手コーヒーショップでもチャイが頼めるし、簡単なスティック状のチャイもあるし、ペットボトルやスパイス入りの茶葉が売っていたりと、日本でもすでに一般的な飲み物ですね。
今回は本場インドのチャイの文化や入れ方、暮らしの中のチャイについてご紹介します。

執筆者

インド宮廷料理マシャール オーナー
アリ三貴子

1994年~インドと日本を行き来し、1999年~2001年フセインシェフの故郷の農村に長期滞在し、女性たちの暮らしを撮影する。
2005年「ムスリムの女たちのインド」(木犀社)出版。その後、インド文化の講演活動やインド家庭料理教室主催する傍ら、2015年~子育て支援事業ママカフェ久が原共同代表。
2021年3月、合同会社マシャールをフセインシェフと設立。

1:チャイとは?


「チャイ」とは、濃く入れた紅茶に牛乳を入れて甘くしたインド式のミルクティーです。
イギリス式のロイヤルミルクティーとは違い、紅茶とお砂糖と牛乳を煮だすところがポイントです。

「チャイ」というカタカナ表記が一般的になってしまいましたが、ヒンディー語の表記では「チャーエ」です。

インドの列車の旅を経験したことがある方は、列車が駅で停車するたびに車両に乗り込んでくるチャイ屋さんと遭遇したことが何度もあると思います。おじさん、お兄さんたちは通る声で「チャーエ、チャーエ」を繰り返します。そのときに確かにチャイに聞こえるかも?と思う事はありました。あと、チャーエの「エ」をはっきり発音しないので、チャイ、またはチャーイに聞こえてしまうのかもしれません。

2:インド人にとってのチャイ

チャイは古くからインドの国民的な飲み物と思われている方も多いのではないでしょうか?
実はチャイは、イギリス統治時代に誕生した飲み物なのです。

当時、東インド会社はインドで紅茶の茶葉を生産し、イギリスへ輸送していました。所謂ダージリンのような大きくて香り高い茶葉をポットで入れたストレートティー、温かいミルクを入れるロイヤルミルクティーとして飲むための高級茶葉です。

茶葉の精製時、大量の紅茶の粉が出ますが、それは細かいので、ストレートで飲むには色が濃く出過ぎたり、苦味が出たりで、廃棄せざるをえませんでした。そこで、その茶葉をインド人に買ってもらうために考えられたのが、チャイなのです。

ミルクとお砂糖の甘味で苦味が中和され、甘さと牛乳で簡単にエネルギー補給も出来る。しかも、道端で立って飲めることもあって、インド人の労働者の間で広がっていきました。そして、その後に家庭へも広がり、今では朝のドリンク、夕方のお茶タイムのドリンクの定番となりました。

今やインド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカなど南アジア全体で、チャイはどこでも飲める国民的飲み物です。地域によって作り方や牛乳の濃さなどが違い、各家庭、各地域で色々な味のチャイが味わえます。

3:チャイで使われている茶葉

現在は、チャイ用に製造されたCTC茶葉が一般的に普及しています。

昔は高級茶葉を精製したときの粉茶でしたが、現在では、それだけでは生産量が追いつかないためCTC茶葉が誕生しました。

CTC茶葉とは、(Crush = 押しつぶす)、T (Tear =引き裂く)、C (Curl = 丸める) の頭文字をとった茶葉のことです。
チャイ用に紅茶が色濃く抽出されるように、茶葉を押しつぶし、裂いた後に、茶葉がくるっと巻いた丸い形が特徴的です。

4:チャイで使われているスパイス

チャイに入れるスパイスとして、カルダモンやシナモン、クローブが代表的なところです。

とは言っても、決して一律ではなく、地域や各家庭で、チャイに入れるスパイスも様々です。

例えば、黒コショウを入れて甘味の中にちょっと辛味を加えたり、ショウガをたくさん入れたり、トゥールシーという葉を入れる場合もあります。
また、チャイ用にブレンドされたミックススパイスも売っていますし、ホールスパイスを煮だして入れる場合もあります。

5:スパイスなしのチャイもある?

スパイスが入っていないチャイも沢山存在します。

チャイにスパイスが入っていなければならないということは、ぜんぜんないのです。

実際に筆者が暮らしていたUP州の農村では、カルダモンやシナモンはとても高価なスパイスだったので、ほとんどの家庭で出されるのは、茶葉と砂糖、ほんの少しの牛乳が入ったシンプルで甘いチャイでした。また、街中のチャイ専門店では、とてもシンプルに、スパイス無しで砂糖・茶葉・牛乳だけで作っているお店も多いです。
大量につくるため、コクが出てスパイスに頼らなくても美味しいチャイが出来るのでしょう。

6:本格チャイのレシピ3種

「シンプルチャイ」「マサラチャイ」「カシミーリーチャイ」の3種類の作り方をご紹介します。

とても簡単ですので、いろいろなチャイを楽しんでみてください。

6-1:シンプルチャイ

分量:約2杯分

<材料>

  • お水200㏄
  • 牛乳200㏄
  • お砂糖大さじ1~2
  • チャイ用茶葉大さじ1

<作り方>

200㏄のお水をお鍋に入れて、お砂糖大さじ1、チャイ用の細かい茶葉大さじ1を入れ、2〜3分煮だす。そこに200㏄の牛乳を入れて、吹きこぼれないように更に3分ほど煮だして、茶こしで濾したら完成。

6-2:マサラチャイ(スパイス入りチャイ)

分量:約2杯分

<材料>

  • お水200㏄
  • 牛乳200㏄
  • カシア又はシナモンスティック半欠け
  • カルダモン2~3粒
  • クローブ1~2粒
  • ショウガもしくはショウガパウダー
  • お砂糖大さじ1
  • チャイ用茶葉大さじ1

<作り方>

ホールスパイスはそのままでも、もしあれば、スパイスを叩く器で少し砕いてから入れると香りが出やすいです。
このような道具があるとホールスパイスを潰すのに便利です。
こんな感じに荒めに砕きます。
お砂糖は控えずに甘めがおすすめ。グラニュー糖でも三温糖でもOK。黒糖も美味しいです。
ショウガはスライスより、布巾やキッチンペーパーに包んでから、包丁や麺棒などで潰すと香りが出やすいです。また、ドライジンジャーやジンジャーパウダーでもOKです。
ソースパンに200㏄の水、砂糖、スパイス、ショウガを入れて、2〜3分煮だします。スパイスを煮だす際に砂糖を一緒に入れるとスパイスの香りが出やすいです。
CTC茶葉をたっぷり入れます。
2〜3分煮だしてから、牛乳を加えます。
牛乳を200㏄加えて、吹きこぼれないように、弱火で更に2,3分煮詰めます。
茶こしで濾したら完成。細かい茶葉まで濾せる2重網の茶こしがおすすめです。

6-3:カシミーリーチャイ

筆者がカシミール地方へ旅した時にとても美味しかったミルク無しチャイです。さっぱりしたいときや、ノンカフェインの飲み物が欲しいとき、ミルク系のお菓子との組み合わせもおすすめです。

分量:約2杯分

<材料>

  • お水400㏄
  • カシア又はシナモンスティック2~3本
  • カルダモン4~5粒
  • クローブ3~4粒
  • ショウガもしくはショウガパウダー
  • お砂糖大さじ1

<作り方>
ソースパンにお水、砂糖、砕いたホールスパイス(ホールスパイスはそのままでもOK)、叩いて潰したショウガを入れて、4〜5分よく煮込みます。茶こしで濾したら出来上がりです。薄茶色になりますが、色を付けたい場合はCTC茶葉小さじ1を火を止めてから入れて、濾しても美味しいです。

7:まとめ

いかがでしたでしょうか?

チャイはスパイスがあっても無くても美味しくいただくことができます。

チャイはインドのスイーツとも相性抜群ですので、一緒に食べると美味しさがさらにアップしますよ。
インドスイーツについては、「美味しいインドスイーツ26選!本場インドの人気お菓子とは?」で詳しく解説しています。

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