インドのパンと言えば、日本ではやはりナンが有名ですね。
しかし、インドにはナンだけではなく、ロティやパラタ、チャパティなど数多くの種類のパンが存在します。
そして、本場インドで主食として食されているパンは地域によってさまざまです。
例えば、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、北インドの主食はナンではなくチャパティです。
本記事では、主に北インドの主食チャパティについて解説していきます。
<本記事でわかること>
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執筆者
20世紀末にヒンディー語を習得。ムンバイに住んでみるため2006年にふらふらっと渡印、8年にわたり居座る。
その間、幸か不幸か、師と仰ぐ柴原三貴子がアリ三貴子になった瞬間をカラチにて目撃。
まさか同い年の子を持つ母友になるなんて、と運命に翻弄されるうちに子育て期間も終了、現在は千葉県で昼寝のあいまに翻訳をして暮らしている。
1.チャパティとは?
チャパティとは、全粒粉(アーター)を練り込み、発酵させずに薄く円形に平たく焼いたパンのことです。
広くは南アジア全般で主食として食されており、
インドにおいては、北インド地域で主食として食されています。
その理由は、原料であるアーターが「食物繊維が豊富で消化によく栄養価が高い=健康にいい」からです。
日本人に引けを取らない健康志向の現代インド人は、お米で言えば玄米にあたる全粒粉「アーター」に絶対の信頼を置いています。
そんなアーターで作られたチャパティは、今も昔も数億人の北インド人の胃袋を満たすスーパーフードなのです。
また、モヘンジョ・ダロ遺跡で発見された炭化した小麦が現在インド亜大陸で使われている小麦と同種と判明したことから、もしかしたらチャパティは紀元前2500年の古代から食べられていたのかも?なんて話もあるほど伝統的な食べ物なのです。
1ー1.チャパティとナンの違い
チャパティとナンの違いは、原材料と調理器具です。
【原材料】
●ナン・・・精製された小麦粉「マイダ」
●チャパティ・・・薄皮のついたまま挽いた全粒粉「アーター」
【調理器具】
●ナン・・・タンドゥール(大きな石窯が必要)
●チャパティ・・・タワーと呼ばれる平たいフライパン(火はガスコンロでOK)
1ー2.日本でナンが一般的になった3つの理由
インドでは、ナンよりも一般的なチャパティ。
ではなぜ、日本のインド料理店でチャパティではなくナンが一般的になったのでしょうか。
主な理由が3つあります。
<日本でナンが一般的になった理由>
1.全粒粉と比較すると精製された小麦粉の方が圧倒的に流通量が多く入手しやすかったこと
2.タンドゥールさえ用意できれば調理が比較的簡単なこと
3.見た目の華やかさ
現在では、日本のインド料理文化も円熟期に入り、より本場に近い味が求められるようになってきたため、昨今ではチャパティが注目を集めています。
2.チャパティの作り方
2ー1.準備する材料(4人分)
●全粒粉 360g
●水 1.5〜2カップ(必要に応じて)
2ー2.作り方
STEP1ドウを作る
①大きなボウルにアーターを入れます。
(ポイント)
・焼く時の打ち粉用として大さじ2杯ほどのアーターを分けて取っておきます。
②アーターに水を注ぎ入れます。まずは1カップほどの水を入れ、こねてみます。
(ポイント)
・すべてのアーターがまとまらないようならさらに水を足します。
・こねながら加減を見て、必要に応じて水を足します。
・すべてのアーターを水気で拾ってひとかたまりにまとめていくイメージです。
③全体に粉っぽさがなくなるまでじっくりゆっくりこねます。
(ポイント)
・指で押して、ハリはあるけど簡単に指の形に凹むくらいの柔らかさを目指します。
・粉っぽさが完全に消え、ムラなくなめらかになったら、ひとつにまとめます。
・水分を逃さないよう濡れ布巾などでフタをして、30分ほど寝かせます。
④ドウをひとつかみちぎり取り、両手のひらで転がして直径3cmほどの球を作ります。
(ポイント)
大きさにもよりますが、30個ほどの球ができます。
STEP2伸ばす
①球をひとつ取り、手指を使って押しつぶします。
(ポイント)
・球に少し平べったさが加わり、つぶれたあんぱんのような形になればOK。
②打ち粉を少し纏わせたドウをきれいに拭いた清潔な台に置き、延ばし棒を使って平たく伸ばしていきます。
(ポイント)
・力を入れすぎたり、力のかけ方が偏ったりすると、くっついたりひしゃげたりするので、肩の力を抜いて伸ばすのがコツです。
③打ち粉を使って台に付かないように、適宜裏返したり回したりしながら、形が均等に丸く平たくなるまで伸ばします。
(ポイント)
・もちろん最初は丸くならなくても大丈夫。熟練のインド主婦がチャパティを焼くと、台に載って伸ばされるチャパティが、回さずとも自分から回転してくれるため、実にキレイな円形に仕上がります。いつの日かこの境地にたどり着くことを目指して頑張りましょう!
④最後に手で形を整えます。
STEP3焼く
①油は引かず、そのままのフライパンを中火でよく熱します。
(ポイント)
・熱々になったら、形を整えたチャパティを置きます。裏返ったりめくれたりしないよう、落ち着いて挑みましょう。
②しばらくすると、生地表面に気泡がいくつか浮かんできます。
(ポイント)
大きめの気泡がいくつも立ち始めたら➂へ
③利き手に持ったトングや菜箸などでチャパティを取り上げ、反対の手で間髪入れずにフライパンを火からどかし、その直火の上にチャパティを裏返しに置いてしまいます。
続けて、今までフライパンで焼かれていた方の面を上にして直火に置いたら、すかさず火を最強にします。
④強火に直に炙られたチャパティは瞬時にぷくっと全体をふくらませます。
そうなったら焦げないうちにすぐに火を最弱にし、またトングか菜箸でチャパティを取り上げ、保温容器に入れて完成です。
3.チャパティの食べ方とは?
チャパティは、一口サイズにちぎってお好きなカレーをつけていただきます。
何しろインド主婦に絶大なる信頼を得るアーターでできていますから、ドライタイプ、スープカレータイプ、コクのあるカレーまたはさっぱり系、どんなカレーにも合います。
カレーだけでなく、生野菜とヨーグルトを和えたライタ、きゅうりや玉ねぎ、トマトを岩塩とレモンで味付けしたコーシンビールとの相性も抜群。
こうしたサラダ系が加わると、スパイスで刺激を受けた舌を沈静化してリフレッシュしてくれるので強力にオススメします。
多く作りすぎてしまったチャパティは翌日の朝ごはんにいただきましょう。
トースターなどで温めなおすとちょっとカリッとしてまた別の味わいになり、バターと蜂蜜で完璧な朝食メニューに。
4.まとめ
数億のインド人の生活を胃袋から支えるスーパーフード、チャパティ。もしかしたら最初は作るのが「難しい……」と感じるかもしれませんが、焼き上がりの形なんかどうだっていい、と考えてください。
丸くなんかなくても、生焼けになったり黒焦げになったりさえしなければ、手間暇かけて焼いたチャパティは何よりもおいしく感じられるはずです。
ぜひ、お試しあれ!