「ドーサ」というと、最近はインド料理店でもよく見かけるようになったので、召し上がったことがある方も多いことでしょう。
今回は、当店のメニューにもある「マサラドーサ」についてみていこうと思います。
本記事では、そもそも「マサラドーサ」とは何なのか?から、作り方から食べ方まで解説いたしますので、マサラドーサの興味のある方は、ぜひご一読ください。
1.マサラドーサとは?
マサラドーサは、南インド料理の一つであり、特に南インドのタミル・ナードゥ州やカルナータカ州で馴染みのある料理です。
この料理は、発酵させた米とウラッドダル(黒マメの一種)から作られる薄いクレープ状の生地に、特製のスパイスミックスであるマサラを塗り、通常はジャガイモのカリカリに揚げたり、他の具材を詰めたりして作られます。
一般的に、マサラドーサはサンバル(野菜やダールをベースにしたスープ)やココナッツチャツネ、トマトのチャツネといった様々な添え物と一緒に食されています。
MEMO
- チャツネ
ペースト状にしたココナッツやトマト等の野菜に油で炒めたスパイスを混ぜたもの - サンバル
豆と野菜を煮込んだスープ
また、南インドの伝統的な朝食や軽食として親しまれておりますが、その美味しさと栄養価の高さからインド全域で人気があります。
1−1.マサラドーサの由来
南インド、カルナタカ州の沿岸地域にクリシュナ神を祭った寺院で有名な“ウドゥピ”という都市がマサラドーサの発祥の地と言われています。
ドーサとはそもそも生地を焼くだけのシンプルなものでしたが、1930年代に北インドのプーリーバジプーリーにじゃがいものスパイス炒め(バジ)を合わせて食べる料理)をドーサの生地で巻いて提供したのが、きっかけでそう呼ばれています。
こう考えると、案外歴史が浅い料理であること、また、北インド料理の要素を取り入れた創作料理であることに驚きがあります。
1−2.マサラドーサと合う料理
マサラドーサにはサンバルやチャトニを合わせるのが定番ですが、お好みのカレーと合わせておいしくいただけます。
スパイシーチキンカレー
複数のスパイスを使った、パンチが効いたカレーとの相性は特にバッチリです。
ブラックペッパーやチリパウダーの辛さに少し酸味があるドーサの生地を合わせれば止まらないおいしさです。
キーマカレー
ぼってりとした挽肉の食感とぱりっとしたドーサの食感のバランスがよく、食べやすさ抜群です。
思った以上にマッチした組み合わせに驚くこと間違いありません!
バターチキンカレー
南インド料理に多く見られるココナッツミルクベースのカレーはもちろんのこと、濃厚さでは負けないバターチキンカレーもおすすめしたいカレーのひとつです。
トマトの酸味と生クリームのコク、全体的に甘味があるリッチな味わいのカレーをサクッとしたドーサが引き立ててくれます。
海老カレー
最後におすすめするのは海老カレーです。
ココナッツを少し効かせた濃厚な海老カレーは海老の風味とココナッツの甘さがなんともいえないおいしさです。
パリっとしたドーサを浸して食べれば大きなドーサもあっという間になくなってしまうことでしょう。
2.マサラドーサに使われるスパイス
マサラドーサに使われるスパイスを「マサラ」と「ドーサ(生地)」に分けて紹介します。
2-1.マサラに使うスパイス
赤唐辛子
ナス科トウガラシ属植物。独特の刺激的な辛みを持ち、油で旨味と香りが引き出されます。
マスタードシード
アブラナ科植物の種子。南インド料理でよく登場するスパイスです。油で熱すると香ばしいナッツの香りがします。料理のスタータースパイスとして、また仕上げにテンパリング(油を熱してパチパチとはじけるまで炒めてから料理にスパイス油をかける手法)として使用します。
クミンシード
セリ科植物の種子。油で香りを引き出して使います。料理に豊かな風味をプラスしてくれる、インド全域で使われているスパイスです。
ヒーング
せり科植物(茎)の樹脂粉末。強い香りがありますが、加熱することで料理に旨味と風味をプラスしてくれます。ガス抜きの効果があり、イモ類や豆類の料理には欠かせません。
カレーリーフ
ミカン科の木。香ばしい香りが特徴で南インド料理やスリランカ料理に欠かせないハーブです。
主に料理のスターターとしてフレッシュな生の葉を加熱して使います。
ドライの葉は香りが弱いので生の葉が手に入らなければレシピに記載がある場合でも省いてもよいでしょう。
ローストチャナダール
ひき割りのヒヨコ豆。加熱することでカリっとした食感となり、料理に香ばしい豆の香りを添えてくれます。
炒め物や煮込んで豆カレーにする等、頻繁に登場する南インド料理定番の豆。
チリパウダー
唐辛子を粉砕してパウダーにしたもの。刺激的な辛みと旨味があります。
産地によって辛さが異なるので、確認してから使用するとよいでしょう。
ターメリック
ショウガ科植物(根)を茹でて乾燥させパウダーにしたもの。カレーの色味付けや、スパイスのつなぎ役となってくれるのでインド料理には欠かせません。防腐効果や殺菌効果もあります。
2-2.ドーサ(生地)に使うスパイス
バスマティーライス
香り米。日本米とは異なりさらさらっとした食感が特徴の長粒米。
ウラドダール
ドーサやイドゥリー、ワダなどのスナック料理や炒め物のスターターなど、南インド料理でよく使われる淡い黄色の豆。
フェネグリークシード
マメ科植物の種子。苦みが特徴ですが、加熱すると独特の甘い香りがします。
南インド料理のサンバル(豆と野菜のカレー)のベースとなるサンバルパウダーなどにも使われます。
3.マサラドーサの作り方
2021年8月に開催された当店オーナーシェフ、フセインシェフのドーサレッスンの内容をご紹介いたします。
3-1.用意する材料
マサラの材料
- 油(サラダ油、米油等)…100ml
- ホールスパイス
◇赤唐辛子…7本
◇マスタードシード…大さじ1
◇クミンシード…大さじ1 - ヒーング…少々
- カレーリーフ…15枚(一枝)
- 玉ねぎ(中サイズ)…1.5個(スライス)
- ローストチャナダール…大さじ6
- パウダースパイス
◇チリパウダー…大さじ0.5強
◇ターメリック…大さじ1強 - 塩…大さじ1.5弱(適量)
- トマト(小)…2個(スライス)
- じゃがいも(メークインがおすすめ)(中)…6個(茹でて一口大にカット)
- パクチー…適量(刻む)
ドーサ(生地)の材料
- バスマティーライス…3カップ
- ウラドダール…1カップ(スパイスショップで入手可)
- フェネグリークシード…小さじ1(※)
- 水…適量
- 塩…適量
- ベッサン粉(ひよこ豆粉)…大さじ1
(※)フェネグリークシードを入れるとふわふわっとした仕上がりになりますが、省略可能です。
3-2.作り方
マサラの作り方
STEP1
じゃがいもを柔らかくなるまで茹でて一口大にカットしておきます(硬さはお好みで)。
STEP2
フライパンで油をあたため、ホールスパイスを入れます。
マスタードシードがぱちぱちと音を立ててはね始めたらヒーングとカレーリーフを入れ、カレーリーフがパリッとしたら(跳ねるのできをつけてください)、玉ねぎを加えます。
スライスの一部が茶色くなるまで炒めます。
STEP3
油に玉ねぎが馴染んできたらローストチャナダールを入れます。
色が薄茶色に変わってきたらヒーングを追加し、パウダースパイスを入れます。玉ねぎがフライドオニオン状になるまで炒めたら、トマトを追加し、煮崩れるまで混ぜ合わせます。
STEP4
手順1で茹でておいたじゃがいもを入れ全体に混ぜ合わせます。刻んだパクチーを入れれば完成です。
※このままでもおいしくいただけます。
ドーサ(生地)の作り方
STEP1
ボウルにバスマティーライス、ウラドダール、フェネグリークシードを入れ、ひたひたの水を注ぎます。
丸一日浸水します。夏場は半日程度を目安にしてください。
STEP2
適量の塩と水、とろみをつけるためのベッサン粉を入れてミキサーにかけます。どろっとした状態になりましたら、ラップをかけ一晩発酵させます(4~5時間でも大丈夫です)。
泡がぶくぶくとでてきたら生地の出来上がりです。
STEP3
フライパンに油を薄くひきます。少量の水を振り入れ全体になじませてから、お玉8割程度の生地を流し入れます(量は調整してください)。
クレープをイメージするとわかりやすいかもしれません。
カトリ皿を使って均等に生地を薄くのばします。
カトリ皿がない場合は、半分に切った玉ねぎの外側にフォークを指し、断面の平らな面を使って生地をのばしてください。
STEP4
生地のまわりに油を少量流し入れます。
端に色がついてきたら裏面の焼き具合を確認し、じゃがいもマサラを適量中央部分にのせます。
両端を順番に折り畳み、お皿にのせて完成です。
4.マサラドーサの食べ方
インドの一般的な食べ方をご紹介します。
宗教上、インドでは右手を使います。
右手を使ってドーサを小さくちぎり、一端くぼみをつくってからチャトニーやサンバルをすくって食べます。
サンバルの中にちぎったドーサを入れてスープを吸わせて食べたり、ドーサにサンバルをかけたり、具材のポテトマサラにチャトニーをのせて生地と一緒に食べたりします。
つまりはドーサの生地をソースやスープにつけて食べるといった感じでしょうか。
直接手で食べることに抵抗がある方はフォークやスプーンを使っても構いません。
まずはそのまま食べて生地の食感や味を楽しんでからいろいろと味をかえて食べてみてください。
5.マシャールのマサラドーサ
当店で提供しているマサラドーサは、少し厚みはあるもののぱりっとした固い食感の生地で、細長く、その大きさに驚かれるお客様もおります。
じゃがいもの具材はスパイスが効いていて、そのまま召し上がっていただくとちょっとしたおつまみにもなります。
付け合わせのサンバルは豆の食感とほどよい酸味があり、食感がしゃりっとしているココナッツチャトニーやトマト感強めのトマトチャトニーと合わせると最後まで飽きることなくいただけます。
ローカルの軽食とは違い、全体的に上品な当店のマサラドーサ、ぜひ一度お試しください。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか。カレーやナーンだけではないインド料理も沢山あります。
これをきっかけとして様々なインド料理に興味をもっていただけたら何よりです。
まずはドーサ、召し上がってみてくださいね。